臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
足元を見て,後頭部をかきながら入ってくる澪は,私の存在にも直ぐには気づかない。

それを見て,ようやく呼吸を取り戻した私は,何を思ったか体勢を少し変える。

多分,頭が真っ白になって,意味なんて無かった。

だけどそれがもたらす結果はもちろんあって,私はスマホを置いていた小さい机に,コツンと足先をぶつける。



「み,お……?」



視線が交わる刹那。

私は咄嗟に自分を抱き締めてしゃがんだ。

巻いたタオルが腕に擦れてすごく痛かった。

だけど唯一自分の身を守ってくれているそれに,文句を言うなど誰に出来ようか。

露出した肌が赤く染まっているのが見える。

澪にもそれが見えていると思うと,申し訳なさまで出てきた。
< 14 / 262 >

この作品をシェア

pagetop