臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
本来土俵にすら立てないような私が,澪に好きだと言われて嬉しくないわけがない。

なのにこんなにも胸が痛んで,涙が出て,悲しくて仕方ないのはなんで。

私は澪が好きなのではなかったの?

ううん。私は確かに澪に恋をしている。

なのに嘘でもほんとでも,素直に喜べない。

その理由が分からない。

いきなり好きな人が自分に振り向いたから?

そんなんじゃない。

ー私は,澪のことばかりに気をとられて,自身の発した不可解な言葉なんてものは一切思い出さなかった。

意味もなく,また歩き出す。

すると,何かの影が自分にかかる。

……傘?

誰かが自分に傘をさしている。

周りを見渡すと,皆傘をさしていて,雨が降っていた。

いつから…

ぼーっと不思議がっていると,存在を忘れていた『傘をさしている人』が自分に言う。
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