臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。



「そんな顔俺に見せてると,澪に怒られるよ? 主に俺が」

「れ,澪?」



急になんで澪?

私はぷくっと頬を膨らませる。



「だ~か~ら~。怒られるんだって…ははっ変な顔笑」

「…やめとぇよ」



片手で頬を持ち上げる様にぐいっと手のひらが当てられた。

けれど,離れていった指に水滴がついているのをみて,私は強く出れなくなる。

まだ,残ってたんだ……

恥ずかしさすら生まれて,こっくりと黙りこんだ。



「何? みおちゃん。腹違いの兄弟とか,そーゆーのが欲しかった?」



からかうような口調なのに,なんでか。

その笑い声は乾いて,自傷の様にも聞こえた。



「…あり得ないよ。澪と同い年なんだもん。お義母さん,円満離婚だって言ってたし」

「うん。ごめんごめん。冗談」

「…そう聞こえなかった」

「もー。ごめんって。」



何も解決しないまま,お寿司を1皿ずつ平らげた私たちは,お寿司やさんを後にした。

…似てないし,ね。

私は礼夢くんの表情を,人知れず引きずっていた。
< 145 / 262 >

この作品をシェア

pagetop