臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「そんな顔俺に見せてると,澪に怒られるよ? 主に俺が」
「れ,澪?」
急になんで澪?
私はぷくっと頬を膨らませる。
「だ~か~ら~。怒られるんだって…ははっ変な顔笑」
「…やめとぇよ」
片手で頬を持ち上げる様にぐいっと手のひらが当てられた。
けれど,離れていった指に水滴がついているのをみて,私は強く出れなくなる。
まだ,残ってたんだ……
恥ずかしさすら生まれて,こっくりと黙りこんだ。
「何? みおちゃん。腹違いの兄弟とか,そーゆーのが欲しかった?」
からかうような口調なのに,なんでか。
その笑い声は乾いて,自傷の様にも聞こえた。
「…あり得ないよ。澪と同い年なんだもん。お義母さん,円満離婚だって言ってたし」
「うん。ごめんごめん。冗談」
「…そう聞こえなかった」
「もー。ごめんって。」
何も解決しないまま,お寿司を1皿ずつ平らげた私たちは,お寿司やさんを後にした。
…似てないし,ね。
私は礼夢くんの表情を,人知れず引きずっていた。