臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
『だから,変わったやつが…』

『違う。何て名前だって…?』



どこか怯えた父親の顔に,流石の俺も笑えなくなっていた。



『礼夢,俺の部屋に来い』



聞きたくないと思いながらも,父親の紡ぐ言葉を,俺は最後まで聞いた。

聞けば聞くほど,俺の体は呪いに蝕まれるように重くなっていく。

話を聞き終えたとき,あまりの気持ち悪さに,俺はえずきを押さえられなかった。

父親には,母と交際しているとき,奥さんがいた。

それを母は知らない。

母は知らず知らずの内に,浮気相手となっていた。

そもそもが,母とは一時の遊びのつもりだったらしい。

奥さんと上手くいかなくなっていた寂しさを埋めるための。

なのに,俺が出来た。

父曰く,母のことはどうでもよかったが,俺の事は義務感からとても大切なものに感じたと言う。
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