臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
焦りに精神が限界を越える頃。

離婚を切り出された。

そのお腹には,子供がいた。

父は拒絶感を覚えながらもとても安心し,



『子供に父親が居なくなるのは自分のせいじゃない』



そんな免罪符だけを胸に離婚を決めた。

今なら慰謝料も要らない。教育費も最低限でいい。

甘い蜜を,携えて。

そして母にバツ1だと告白。

衝撃を受けながらも受け入れた母と,翌年に結婚。

まさか自分と同時進行だったとまでは,母は思っていない。

ーそうして,俺たち家族は出来上がった。



『勘違いしないで欲しい。俺は,今は母さんもお前も愛してる』



…なんの関係もなかった。

俺の方が"兄"。

運要素が強いと分かっていても,それだけが俺の喉につっかえていた。

毎日澪と居て楽しいと思う裏側で,俺はいつも申し訳なさを抱いている。

先妻の再婚報告と共に,お情けと言わんばかりに告げられた子供の名前。

それは



『桜木 (れい)



その人だった。
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