臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「あ,勝手に入ってきたんじゃないよ? お母さんが入れてくれた」



お,お義母さん……

私はお義母さんならやりかねないと納得してしまった。



「それで……はぁ。どうしたの? 礼夢くん」

「その前に…いつまで掴んでるつもり? まぁ嬉しいけど」

「え…」


ーいつまで掴んでるつもり?


『私は何かを適当に,きゅっと掴んだ』



「ふわぁっ?! ご,ごめん…」



何かとは他でもない,礼夢くんの袖。

そろそろと引いた手を,礼夢くんが緩やかに引き留める。

…?



「俺,先に言っとこーと思ったんだよね」

「何を?」



掴まれたままの私の手。

礼夢くんはきゅっと,それを優しく握った。
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