臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。


つまり,私を彼女にしたい?

返事なんてどっちでもいいけど,振り向かせたいってこと?

ぽわぽわぽわと上がっていく体温。



「~っ」



顔に力の入った今の顔は,そうとうおかしな事になっているに違いない。



「くっ…くはっ。あははっ何その顔。ちょー真っ赤。みおちゃん,照れたらそんな顔すんの?」

「うっうるさいな。…見ないでよ……」

「うん。口悪いみおちゃんも可愛いよ」



なんなの,その顔。

ふにゃふにゃした顔しちゃって。

きっと礼夢くんは,そうやって色んな女の子を落としてきたに違いない。



「でも」



ふわっとかかる影。

私は驚いて,ゆっくり開いた目で見上げる。

包み込むような,危機感を全く抱かせない動き。



「見ないで。なんて言われたら,見たくなるのが男じゃん?」



ぶわっと私に届いたのはなんであろうか。

きっと,色気と呼ばれる類いのもの。

私の瞳を覗き込む礼夢くんは,ちゃっかり片手で私の頬を包んでいる。




「……ぁ」

「熱いね,顔。まだ辛い?」



瞳を揺らす私に,礼夢くんはカラリと態度を変えた。

< 159 / 262 >

この作品をシェア

pagetop