臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「"それ",絶対離さないでよ」



心なしか赤く強張った顔の澪は,震えた声で私に告ぐ。

私は見えてるか分からないものの,小さく頷いた。



『ってか入って良いって言われたけど,どこ行けばいいんだよ?』

『あ,確かに? 澪の部屋わかんねぇし取り敢えずリビングでいんじゃね?』

『お茶あるかな~?』

『いやそれは流石に澪に許可もらえ? 笑』



ガヤガヤと騒がしい声から逃げるように,澪は私の手を引く。

絶対に私の方を見ないように。

そして瞬きするまもなく,澪は壁に埋まったクローゼットを開け,私を囲う様にして中に入った。

ゴ~ン。と言う音と共に,扉がしまり,視界は真っ暗になる。

ハンガーやらなんやらから私を守って,澪が肩の辺りを痛そうにしているのは分かった。

なすがままな私は,1度に訪れたハプニングに,頭の中をぐるぐると回した。
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