臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
ーガ,チャッ…



「ただいま。母さんみお起きてる…!?」

「起きてるよ。ただ今は…」



静かながら階段を駆け上がる 澪の音。



「あ,澪…」

「帰ってきたみたいだね~」



すっと立ち上がる礼夢くん。



「えっ,ちょっとどこに」

「俺の言葉,嘘じゃないから。忘れないでね」

「っ」



私の勢いが,一気に萎む。



『みおちゃんのこと好きになっちゃったんだよね』




「そりゃ,忘れないけど」




忘れようが,無いんだから。



「あはは,じゃあ…」



礼夢くんは,人差し指を口元に当てて,いたずらっぽい顔をした。

そして,その手でドアノブを捻る。



「約束ね」



キイッと言う音と共に,今まさに手をドアノブに向けていた澪の驚いた表情が見えた。
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