臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「ごめん,病人なのに」



悔しそうで,心配そうな声。

違う,澪の気持ちは嬉しいけど…

そんな風に,罪悪感を感じる必要はない。

私を労ってくれる澪に,私はふらふら揺れる視界に気付かないふりをして,顔を向ける。



「違う,澪のせいじゃ,ない…!」



本当に。絶対に違う。

歯を食い縛って澪の腕を掴むと,澪は静かに頷いた。



「ごめん。もう,寝る」



なんか,変なの。

脳裏を掠めていく映像。

よく聞こえない声。

懇願するように見つめると,やがて澪は立ち上がる。

部屋から去る澪の背中をみて,私はほうっと安堵の息をはいた。



ーキィィィィイィィィイ!!!



「やっ!」



大きな音に,驚いた私はパッと耳を塞ぐ。

周りを見ても,何もない。

なに,何だったの……

車が急ブレーキをかけたような,そんな音。

そろそろとカーテンを開けて外を見ても,やはりいつも通り車が数台走っているだけ。



『っおとーさん……!!?』


私は今度こそ,意識を完全に手放した。
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