臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。



「だと思った。ちょっと待ってて」



そう言った澪が,洗面所からドライヤーを持って帰ってくる。

澪が,ソファーに腰掛けて,足を少し開く。

そして出来た空間を,ポンポンと叩いて私をみた。



「座って」



…私が?!

澪の黒い目が,私をじっと見ている。

私は代わりに,右手を出した。



「あの,やっぱりちゃんとやるから,自分で。それちょうだい? 澪」

「だめ。甘やかすって言ったでしょ? ほら早く」



甘やかすって,そうゆう事なの?

澪は決定打を打つように,「みお」と名前を呼ぶ。

私はそれに,とことん弱い。

う~…と,頭の中で呻く。

どう,するべきか。



「それとも,意識してくれてるの?」



澪のいじわるで楽しそうな声が,鼓膜を揺らした。
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