臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
瞳を閉じて,開く。

覚悟を決めた私は,引け腰でそそそと動いた。

そして,ソファーぎりぎりの場所に座る。



「みお,遠すぎ。危ないよ」



カラカラとした,甘ったるい笑い声。

だって近い…! 

と目を閉じて堪えていると,お腹に片手を回した澪に引き寄せられる。



「頭,ちょっと下げて」



私は,言う通りに動いた。

そして
ショートにしとけば良かった。
と思った。

なかなか終わらなくて,髪をとかしながら乾かす澪に,一々反応しそうになる。  

後ろから聞こえてくる鼻歌。



「澪,楽しい?」



若干拗ねて訊ねると,澪は「うん」と答えた。



「今まで,こんなこと出来なかったから」
< 206 / 262 >

この作品をシェア

pagetop