臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
トン…と優しい音がなる。

右手の拳と肘を,澪が私の横に置いていた。

そして,澪はずるずると頭を私の肩に乗せる。

澪,弱ってる…?



「はぁ……みお」



澪の熱い吐息が,左の首筋にかかった。

咄嗟に手をあげても,澪がいるせいで押さえられない。

なんっで,こんな,事に……!

強ばる身体。

背中を伝う冷たい汗。

これって…俗に言う壁ドンだよね……

赤く染まる頬。

逃げ場のない背後を確認して,そこにある現実に目を伏せた。



「何も,されてない?」

「されて,ない。公園で遊んだだけ」



なのに



『次は全力で落としにいくから』




最初に思い出したのはあの言葉。

こんなにも後ろめたい気持ちになるのは,なんで?



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