臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。



「澪,私でる…!」

「ん」



私がパタパタと廊下に出ると,澪はすっと道を空けてくれる。

肩にかけられた通学カバンは,大きな弁当箱のせいか重そうに見えた。



「は~い!」



来訪者に聞こえるように声を張り,呼吸を整えてドアを開ける。



「あれ?」



誰も,いない?

そう思った次の瞬間。



「わっ」

「ひゃっ」



開いたドアの裏側から,両手を開いた人間が飛び出てきた。

私は飛び上がりそうな足を,何とか地面に固定して,声のした方を向く。



「礼夢くん!」



キッと牙を向くと,礼夢くんはニコニコと笑った。



「お昼ぶり,みおちゃん」

「もうっどんなイタズラなの…普通に来てよ」

「ごめんごめん」

「澪なら丁度…」
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