臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
見たがってた映画…って。



「夾がドタキャンしたやつ」



心底可笑しそうに笑う礼夢くん。

言い方はあれだけど,確かにまだ見に行けてない。

このままでは劇場で見ることはないかもしれないのだと,今気づいた。



「まぁ,直前までフラれそうだった夾と同じ場所に誘うのはなんか縁起悪くて嫌だけど…」



礼夢くんが顔を歪めて毒を吐く。



「見たいんでしょ?」

「えっ…」


そして,その瞳が弧を描いた。

あの時,私は夾くんの誘いを断ろうとしていた。

なのに,この誘いに乗るの?

でも,前とは違う。

前は,私の中で,前提として,澪がいた。

だけど今は? 



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