臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「ポップコーンくらいなら,奢ってあげちゃうかもよ?」



私が考えすぎていることを察してか,礼夢くんがおちゃらけた声で言った。

思わず笑みが溢れる。

お義母さんへの連絡は,後でいい。

私はついに,ドアの縁を,1歩跨いだ。

また足をあげ,完全に出ようとする。

ラフで,とてもデートに行くとは思えない格好だけど。

礼夢くんはそんなこと,気にもしていない。



「じゃあ…」

「みお」



それだけで,しんっと静まり返る空気。



「澪…?」



お茶でも飲みに,下りてきたのかもしれないと思った。

なんだか菖と再会したときに似ていて,意味もなく心臓が驚く。

澪の静かな声だけでは,その感情を推し量ることが出来ない。

振り向いた先の澪は,しっかりと私を見つめていた。
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