臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
まるで,小動物でも捕まえるみたいに。

澪はゆっくりやって来る。

私には,少し足をずらすことさえ躊躇われた。

そんな私を,礼夢くんはやんわりと助けてくれる。

弱い力で私の腕を掴んで,やわく引いた。



「悪いけど,澪。みおちゃんは今から俺とデートなの。話しは今度にしてくれる?」



けれどその声色は,どこかからかっているような,挑発しているようなもので,私は顔を上にあげる。

澪は,そんな礼夢くんの言葉をまるきり無視すると,やっぱり私だけを見ていた。

澪が私を見てる。

この状況も合わせ,それだけで,頭はパニックになった。

何か,私が言わなきゃいけない。

なにか,ないの?

ただ,少し家を空けるだけ。
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