臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
分かってるのに,心からそう言えない。

そこには沢山の意味が含まれると,知っているから。

私の腕から繋がった,礼夢くんの腕。

それだけで,全部分かる。

礼夢くんが遊びじゃないこと。

だから

約束,そう。



「昨日,約束,したの。だから,行ってくるね。夜ご飯要らないって,代わりに言っといて?」



確実なことは一切口にせず,私は下手くそな笑みを浮かべた。

それでもなお,澪は私から目を逸らさない。

先に目を逸らしたのは,私だ。
 


「じゃあ,ね」



さっと素早く外に足を向ける。

ついでに,礼夢くんの背中もぽんっと叩いた。



「みお…!」


澪が,自由な私の片腕を掴む。

振り払おうとして,私は唇をかんだ。
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