臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
そんな声で,私を呼ばないでよ…!
どこからか来る悔しさにもう一度だけと決めて振り返る。
そして,お互いの瞳が交わって,どちらも揺れた。
澪…
「みお。もう逃がさない。……これ以上,俺から逃げないで…」
私は,この顔から目を背けなくちゃいけないのに。
応えないって,応えちゃだめだって,理解したはずなのに。
「いこ?」
礼夢くんが私の目を覚ますように覗き込んでくる。
「ご,ごめんね待たせちゃって…澪,今日は先約だから」
半ば強引に振り払って,近くの公園に走った。
礼夢くんの手をとって。
痛かったんじゃないかと思う。
だけど,礼夢くんはなにも言わず,行き先すら聞かず,大人しく着いてきてくれた。