臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。



「はー…。可愛いなぁ」

「あの…」


礼夢くんが私に手を伸ばして,髪を1房持ち上げた。

私は戸惑って,なんの理由もないのに声をあげる。



「なにもしない。これだけ赦して?」



からからと笑う礼夢くんは,そんな私の気持ちも見透かしているみたいで。

私はだまって受け入れた。



「諦め悪すぎてカッコ悪いな,俺…。(れい),格好いいもんな,あいつ。知ってるよ。ただ,すっげー悔しい」


苦しそうに,大きく息がはかれる。

私は聞いてるだけ。

そして礼夢くんの手が,パッと離れた。

何かと決別するように。

なんとなく訪れた一瞬の寂しさは,気のせいじゃない。
< 233 / 262 >

この作品をシェア

pagetop