臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「はー…。可愛いなぁ」
「あの…」
礼夢くんが私に手を伸ばして,髪を1房持ち上げた。
私は戸惑って,なんの理由もないのに声をあげる。
「なにもしない。これだけ赦して?」
からからと笑う礼夢くんは,そんな私の気持ちも見透かしているみたいで。
私はだまって受け入れた。
「諦め悪すぎてカッコ悪いな,俺…。澪,格好いいもんな,あいつ。知ってるよ。ただ,すっげー悔しい」
苦しそうに,大きく息がはかれる。
私は聞いてるだけ。
そして礼夢くんの手が,パッと離れた。
何かと決別するように。
なんとなく訪れた一瞬の寂しさは,気のせいじゃない。