臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。



「私,嬉しかったよ。ありがとう」

「うん。こちらこそ」



礼夢くんは丸めた目を細めて,そんなことか,と言うように笑う。

ううん。そんなことじゃないよ。

そんなことじゃなくて



「……礼夢くんは,かっこよかったよ。ずっと。だから,カッコ悪くなんか,ないよ」



それだけ。



「またねっ」



今度こそ,出入り口を早足で跨ぐ。
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