臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
2人がそれぞれ背を向けて,それじゃあきっとお父さんの願った姉弟ではなくて。

いつかそれぞれに恋人が出来て,結婚して。

そんなの,まるでバットエンド。

私はその時,いくら相手を愛していても,きっと堪えられない。

どちらかが結婚なんてしないとしても,やっぱりそれもだめ。

幸せに,なって欲しいから。

私は,お嫁さんに憧れているから。

それなら,相手は澪がいい。

だから,ごめんね。



「あ…」



あれは,雫?

少し先に見える曲がり角,そこから出てきた人影に,私は目を凝らす。

すると雫も私に気づいて,不自然なほどピタリと止まった。



「雫…なんでこんなところに?」



そんな知っても仕方ないこと,聞いている場合ではないのに。

私は呼吸を整えながら足をとめた。
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