臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
えっえっ。

とおろおろしながらも,私はその場から動かない。 

やがて長く思えたその一瞬で,澪の両腕が私を捕らえる。

ぎゅっと力強く引き寄せられて,私の左頬が澪の肩にポフリと沈んだ。

そして状況を理解した私。

ーカァァァァアァァァ  

と熱が集まっていくのが分かって,身体が固まる。

猫のように丸まった手は,身体を支えるために,澪の胸板辺りにそっと触れていた。

私,今…澪に抱き締められてる?

その距離感故に,澪の匂いが濃く全身に回る。

そのせいで,呼吸もろくに出来ない。

つまり,どうゆうこと……?

そろそろと真っ赤な顔を上げると,それを見た澪が片手の甲を目元に当てる。

そしてまた,ぎゅうっと私を片手で抱き締めた。


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