臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
偶然には思えなくて顔を上げると,今度は澪が私の指数本を,きゅっと掴む。

そして,最後に私の手を,しっかりと握った。

それに対し,私は恥ずかしくて,自由な片手を顔に当てる。



「もう,いいんでしょ?」



からかうような声の澪に,私は



「ぅん」



と声を絞り出した。

嬉しいのは,私も同じだから。

家までの短い距離を,私達は。

それをそのまま歩いた。
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