臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
次に合う,大きくて可愛い瞳。

桃色の唇。

その子は,私を見つけて嬉しいという,いかにもな表情で笑う。

すると少しだけ仰け反って,思い切り前に体重をかけた。

片手はメガホンのようにして,もう片手はブンブンと空中でふる。

可愛いを具現化したみたいな子。

ほんと,可愛いの。

もちろん辺りの騒音や距離の長さから声は届かない。

そんなのあの子だって分かってる。

そんなあざとい彼女に,私は苦笑いを浮かべながら手を振り返した。

蕪木(かぶらぎ) (しずく)

私の,友達。だと呼びたい。

私に聞こえない声も,いつも通り周りにはバッチリ聞こえてるようで,沢山の目が私に向く。

中には隣にたっている澪のものも。

窓を挟んだ先にいる2人。

仕方ない。それを見せつけるのが雫の目的なのだから。
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