臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「そんときはお前もこいよ,澪。みおさんと2人きりは流石に怒られる」



ははっと笑う夾くんは幸せそうで,何よりだ。

……澪は正反対の顔をしているけど。



「それなら,別にいんじゃない」



ふいっと顔をそらした澪に,私は素直じゃないなと思った。



「良かったね」



私にそんなことを言ったのは,雫ではない。

明らかに雫より声が低くて,そもそも女子の物ではない。

驚いて振り返ると,そこにいたのは礼夢くんだった。

相変わらず顔が綺麗だけど,どういう意味?

何が,良かったね,なの?

じわじわと背中が嫌な汗で湿っていく。



「みおちゃん,困ってたでしょ?」

「なんで? まぁ,ちょっとだけ困ってたのは認めるけど……」



私が濁そうと,隠そうとしたのを見透す様に,礼夢くんが言う。



「澪が,好きなんでしょ?」
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