臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
容赦なく礼夢くんの後頭部にぶつけられたのは,どこかで適当に拾ったと思われる,柔らかいボール。

恐らく授業中に紛失したものだ。



「澪に余計なちょっかい掛けないでくれる? 女の子追い詰めるなんて,相変わらずいい趣味してるよね,礼夢」



絶対0度の声と瞳。

私はさっとその持ち主に近寄った。



「雫っ」

「はいはい」



雫は哀れなものを見るように,私を背中に隠す。



「雫から俺に話しかけて来るなんて,明日は飴でもふっちゃう?」

「……全く面白くないんだけど」

「2人はその,知り合い?」



雫がここまで砕けた話し方をするのは見たことがない。

余程関わりたくないようで,雫は思い切り顔をしかめる。
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