臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「え…? でも」

「ほら,いくら?」

「すみません,絶対返すので…お家ってどこですか?」

「いいよそんなの。大した金額でもないし」



いえいえ,いやいや…と平行する話し合い。

とは言え適当な家を教えても危ない。

どうしよもないと,私は素直に教えることにした。

ここでこの子を置いていくと,容姿のせいで変なのに絡まれそうだ。



「また遊びに来たときにでも返してくれればいいよ。いくらなの?」

「__円です。すみません」



本当に来たときのためにと,私はお菓子を買うことを決めた。



「あ,私,麻冬(まふゆ)っていいます」

「そうなの。とっても良い名前」



聞いたとき,本当にそう思った。

クールで,だけどどこか可愛いその名前は,目の前の少女にとてもぴったりだと感じたのだ。
< 92 / 262 >

この作品をシェア

pagetop