臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「そう,なんですね。元カレとかですか?」



踏み込んだ質問だと本人も思っているのか,麻冬ちゃんはおずおずと聞いてくる。

仕方ない。急にこんな事を言われて,なんと返せばいいか分からないんだろう。



「そうだよ」



初めての,大事な彼氏だったの。

大事にしてくれて,私も大事にしたかったの。



「ほらっ,丁度なんじゃない? 気をつけて帰ってね」



小銭を渡して手を振ると,彼女もたっと駆け出した。



「おねーさん! ありがとうございます。またすぐ,絶対に伺うので!」



良いって言ってるのに……

可愛い子だなと,私は彼女の好きそうなダークチョコを買いに行った。

あの様子では,本当に近日中にでもやって来そうだったから。

そして何故か,彼女はダークチョコが好きなような気がしたから。

もしかしたら,久しぶりに輪郭のはっきりした彼を,クールな見た目で可愛い彼女に重ねたからかもしれない。
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