臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
そのインターホンが鳴ったのはお昼時。

澪が



「もうすぐ礼夢の誕生日…」



と言いかけたところで大胆に鳴った。

何か頼んだかな? それとも宗教勧誘かしら。

そう思いながら対応するのは私。

お義母さんは友達と仲良くカフェに繰り出しているし,私の方が玄関に近い位置に居たから。

私はパジャマ姿のままドアを開ける。



「すみません,こんにち…え…」



え…と言いたいのはこちらだと,私は喉まで来ていた悲鳴を圧し殺した。

どうして急に,どうやって。

忘れるなんてあり得ない人が,私の玄関で私と同じ顔をしていた。



(あやめ)…なんで……」

「…妹が,世話になったみたいで…。なるほど,可愛くて綺麗で天使みたいな人,か。久しぶり」

「久しぶり…だね」



菖がくすくすと笑って,私も返す。

相変わらず,見た目だけは大人っぽい。

今は中身もなのかもしれないけど。

だってまた,菖はこんなにもかっこよくなってる。
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