臆病な私に,君の溺愛は甘過ぎる。
「それとも……元カレだとは,家族に言えない?」



拒絶からか,喉がひゅっと鳴る。

麻冬ちゃんも,口に手を当てて目を丸くしていた。

予想はできても,実際聞くと違うんだろう。

澪も,驚愕に満ち溢れた顔をしている。

言葉を失っているようだった。




「と,にかく。中へ…どうぞ」



菖は,私の初めての,そして唯1人の元カレ。

中2の時に告白されて,卒業までの丸っと1年間付き合っていた。

私は菖の真っ直ぐで優しい瞳が好きで,どきどきしながら承諾したのだ。

中1で仲良くなったことを考えると,菖との付き合いも決して短くはない。

それも,私が一方的に断ち切るまでの話だけど。
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