【完結】橘さんは殺された。
「……そうか。あれからもう、随分経つもんな」
「七年です。……七年経ちました」
「……そうか、七年か。 で、俺に聞きたいことって?」
城戸先生は俺を職員室に招き入れ、コーヒーを淹れてくれた。
「ありがとうございます」
コーヒーのカップを受け取った俺は、そのままコーヒーを一口飲む。
「先生、橘さんってバイトしてたんですか?」
「バイト?……さあ、どうだったけな」
城戸先生は首を傾げて考え込む仕草をした。
「俺が見た捜査資料には、橘さんはバイトの帰りに一人で帰っている所で、その後暴行されて殺されたって書いてあったんですよ」
「あー……確か当時の警察もそんなことを言っていた気がするな」
七年も経てばさすがに曖昧になるとは思うけど……。
「当時、先生はどんなことを聞かれたんですか?警察から」
コーヒーを口にする先生に、そう問い詰めてみる。
「どんなことって……。曖昧ではあるが、橘がどんな生徒だったかとか、交友関係とか。後は何かトラブルに巻き込まれている可能性があるかとか、そんなことだったと思うけどな……。あまりよく覚えていないな」
と考え込みながら、城戸先生は言った。
「そうですか……。あの、橘さんって当時付き合っている人とかいましたっけ?」