【完結】橘さんは殺された。
「……先生、俺絶対に諦めないです」
「え?」
「橘智夏を殺した犯人を……絶対に許せないです。橘智夏にあんなことをした犯人を、絶対に俺がこの手で捕まえます」
橘智夏が死ぬ時に何を思い、何を願ったのか。……俺はその答えを知りたい。
「……藤嶺、お前のその勇気、確かに受け取ったよ」
「はい。……先生、もし橘さんのことで何か思い出したことがあったら、俺に連絡してもらえませんか? これ、俺の番号です」
俺は先生にそう告げて自分の名刺を渡した。
「分かった。 頑張れよ、藤嶺刑事!」
「ありがとうございます。……先生も、身体には気を付けてください」
「おう」
城戸先生の元から離れた俺は、橘さんが殺害された現場へと出向いた。
そこで瀬野さんと合流する予定だったからだ。
「瀬野さん!」
「お、どうだった?先生への聞き込みは」
と、瀬野さんが聞いてくる。
「いえ、特には……。七年前のことなんで、やはりあまり覚えてないみたいです」
「そりゃあそうだろうよ。七年前のことを鮮明に覚えてる人は少ないからな」
「……ですよね」
瀬野さんも犯行現場で色々聞き込みをしたらしいが、当時のことを覚えている人はいないようだった。
「手がかりなし、か」
「そうですね。……あの、当時の鑑識の捜査では何か体液以外は出なかったんですか?」
「そのようだな。少し離れた所に被害者のカバンが落ちていたようだったが、そこには犯人に関する痕跡は残ってなかったようだしな」