【完結】橘さんは殺された。
「……そうですか」
落ちていたのは、橘さんのカバンだけってことか……。
でもそこには、何も手がかりになるようなものはない……。
「鑑識が見つけたもので言うと、小さな繊維片などはあったようだが、被害者が着ていた制服の繊維片だったみたいだしな」
「彼女、襲われた時抵抗はしなかったんですかね……?」
「みたいだな。……というか、抵抗出来ないようにされたんじゃないかと、俺は思ったんだが」
周りを見渡しながら、瀬野さんはそう口にした。
「……抵抗出来ないようにされた?」
それって……。
「薬で眠されたか、もしくは……。犯人が二人いた、とかな」
「……っ!」
犯人が二人……。それなら抵抗出来なかったのも、頷けるな。
でも司法解剖の結果、睡眠薬などは検出されなかったと書いてあった。……ということは、やはり犯人は複数人いたって考える方が自然だ。
「犯人が……二人……」
「だが、これはあくまでも憶測にしかすぎない。……鵜呑みにするな」
「はい」
瀬野さんの言葉が妙に引っかかる。確かに睡眠薬で眠らせれば、一人の犯人でも可能だ。
だが睡眠薬などじゃなかった場合、絶対に本来なら抵抗するはずだ。 それがなかったってことは、やっぱり犯人は複数人いたって可能性が高い。
「七年前の捜査でも、複数人の犯行っていう線は出なかったんですか?」