【完結】橘さんは殺された。
橘さんはみんなから好かれていた。明るくて美人で、誰とでも仲良くなれる社交的な人だった。
そんな橘さんのことが、俺は羨ましくも思った。
「橘さん、お菓子ありがとう。……これ、お返し。いつももらってばかりだからさ」
「え?いいの? ありがとう、藤嶺(ふじみね)くん」
ーーー橘さんのその笑顔が、俺は好きだった。
男子はみんな、橘さんのことが好きだったことに違いはないと思う。
まあ橘さんにその気持ちを伝えたことなんて、なかったけど。
「藤嶺くん、赤ペン貸して?」
「ああ、はい」
「ありがとう」
橘さんの笑顔を見ていると、本当に可愛らしいなって思った。
橘さんとの距離はなかなか詰められなかったけど、それでも橘さんのことを遠くから眺めているだけで、俺は充分だった。
それから半年。まさか橘さんが殺されるなんて、その時の俺達は思ってもなかったーーー。
◇ ◇ ◇
「みんな、橘のお通夜が決まった」
それから数日後、担任の城戸(きど)先生が俺達にそう告げてきた。
「お通夜は明日の16時からだ。みんなで参列しよう」
先生の問いかけに、みんなは「はい」と頷いた。
「……橘さん」
橘さんのあの笑顔が、未だに忘れられない。
明るく楽しそうに笑っていた、あの笑顔を……。
ーーー俺は橘さんの笑顔を、ずっと忘れられそうにない。
◇ ◇ ◇