【完結】橘さんは殺された。
「……ありがとうございます」
「後悔してるのか?好きだって言えなかったこと」
そう聞かれると、そうなのかもしれない……と思った。
「……多分、そうなのかもしれないです」
遠くから見ているだけで、充分だと思えたんだあの時は。
「そっか」
「……今更後悔しても、遅いですけどね」
橘さんはこの世にもういない。 本人からその答えを聞くことなんて……もう出来ない。
「だからお前は、刑事になったんだろ? 彼女の死の真相を確かめるために」
「はい。……知りたかったんです、彼女がどうして死んだのか。どうして死ななきゃならなかったのか、その答えを知りたかったんです」
俺はそのために刑事になった。 橘さんを殺した犯人を知りたくて、刑事にーーー。
「……藤嶺」
「はい」
「実は俺にもな、婚約者がいたんだ」
瀬野さんはコーヒーを片手に話し始めた。
「……え?」
婚約者……? 瀬野さんのこんな話……初めて聞くかもしれない。
「でも俺の婚約者も死んだんだ。……殺されたんだよ、殺人鬼に」
「殺人鬼……?」
殺人鬼って……どういうことだ?