【完結】橘さんは殺された。


「十二年前の七夕の日、お祭りがあったんだ。そこで無差別殺人が起きた。……そこで俺の婚約者は、殺人鬼に殺された」

「……無差別、殺人?」

 え、それってーーー。

「その殺人鬼には、無期懲役の判決が最高裁から下された。……でも二年前、その犯人は獄中死したんだ。死因は心不全だってさ」

「………」

 俺は今初めて知った、瀬野さんの悲しい過去をーーー。

「俺みたいな人間を出さないために、俺も刑事になったんだ。……お前と同じだ」
    
 そう話してコーヒーを飲み干す瀬野さんの横顔は、とても寂しそうだった。
 瀬野さんの過去を知ってしまった今、俺は何も言えなかった。



「だから藤嶺」

「はい……?」

「お前は絶対に、諦めるな」

 【諦めるな】その言葉が、胸の奥深くに突き刺さった。

「彼女の無念、晴らしてやれ」

「……はい」

 俺は絶対に諦めない。……橘さんの無念を、絶対に晴らしたい。

「藤嶺、明日もう一度聞き込みに行くぞ」

「……え?」

「彼女の事件、洗い直すんだろ?」

「……はい」

 橘さんの事件の犯人を見つけるまで、俺は絶対に諦めないと心に誓ったーーー。





◇ ◇ ◇
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