【完結】橘さんは殺された。
コーヒーを口にした俺に、牧村先生が問いかける。
「はい。……牧村先生、今日はあなたに聞きたいことがあって来ました」
「聞きたいこと?」
「これは元生徒してではありません。……一警察官として聞きます」
俺がそう言うと牧村先生は、顔を上げて俺達を見た。
「牧村先生……牧村先生は、七年前に俺達の学校で起きた橘智夏の事件のことを、覚えていますか?」
「橘智夏の事件……?ああ、覚えてるよ。お前のクラスメイトだったんだよな」
牧村先生は、コーヒーを口にしながらそう答える。
「そうです。 七年前の10月、俺のクラスメイトの橘智夏が突然亡くなったんです。……林の中で、遺体となって発見された状態で見つかりました」
「そうか……。そうだったな」
牧村先生の表情は、あまりさっきと変わらないようにも見える。
「俺は橘智夏の死の真相を確かめるために、刑事になりました。そしてその事件を再捜査することにしたんです」
「……再捜査?」
牧村先生は不思議そうに俺を見る。
「はい。橘智夏の事件は、犯人が捕まらずに未解決事件となりました。……俺は橘智夏の死の真相を必ず突き止める覚悟を持って、再捜査に挑んでいます」
牧村先生、あなたには本当のことを話してもらいますよ。……本当のことを。
「……そうか。再捜査、してるのか」
「はい。 それで牧村先生、あなたに聞きたいことがあるんです」
「俺に聞きたいこと?……まああまり覚えてるかどうかも分からないが、俺で良ければ協力するよ」
「ありがとうございます」