【完結】橘さんは殺された。
「先生、少し落ち着いてください」
と瀬野さんが伝えると、先生は黙って座り込んだ。
「……牧村先生。あなた以外にももう一人、その時に目撃されている人がいたんですよ」
そして瀬野さんが、再び切り込んでいく。
「目撃されている人……?」
「はい。……城戸先生、です」
そう。あの防犯カメラの映像にはもう一人、映っていた人物がいた。
それは……城戸先生だった。 映像を見た時、俺も最初は信じられなかった。
「っ……!」
「あなたと城戸先生は、知っていたんですよね?……橘智夏がキャバクラでバイトをしていたことを」
「っ……知らないな、そんなこと」
「牧村先生、惚けてもムダだと言ったはずですよ。 俺達は、証拠を掴んでますので」
瀬野さんが牧村先生にそう伝えると、牧村先生は黙り込んでしまった。
「そのキャバクラで働いていた元従業員に話を聞きました。あなたは以前、あのキャバクラによく通っていたそうですね。……たまに一緒に、城戸先生も連れて通っていたとか」
「……それはっ……」
「そうなんですね?……牧村先生」
俺が牧村先生の目を見つめると、牧村先生は観念したのか「……藤嶺、お前の言う通りだ」と言葉を発した。
「……やっばり」
そうだったんだな……。
「……俺と城戸先生であそこにいた時、最初に橘が働いているということに気付いたのは、俺なんだ」
そう話す牧村先生の表情は、沈んでいた。