【完結】橘さんは殺された。


「先生、少し落ち着いてください」

 と瀬野さんが伝えると、先生は黙って座り込んだ。

「……牧村先生。あなた以外にももう一人、その時に目撃されている人がいたんですよ」

 そして瀬野さんが、再び切り込んでいく。

「目撃されている人……?」

「はい。……城戸先生、です」

 そう。あの防犯カメラの映像にはもう一人、映っていた人物がいた。
 それは……城戸先生だった。 映像を見た時、俺も最初は信じられなかった。

「っ……!」

「あなたと城戸先生は、知っていたんですよね?……橘智夏がキャバクラでバイトをしていたことを」

「っ……知らないな、そんなこと」

「牧村先生、惚けてもムダだと言ったはずですよ。 俺達は、証拠を掴んでますので」

 瀬野さんが牧村先生にそう伝えると、牧村先生は黙り込んでしまった。

「そのキャバクラで働いていた元従業員に話を聞きました。あなたは以前、あのキャバクラによく通っていたそうですね。……たまに一緒に、城戸先生も連れて通っていたとか」

「……それはっ……」

「そうなんですね?……牧村先生」

 俺が牧村先生の目を見つめると、牧村先生は観念したのか「……藤嶺、お前の言う通りだ」と言葉を発した。

「……やっばり」

 そうだったんだな……。

「……俺と城戸先生であそこにいた時、最初に橘が働いているということに気付いたのは、俺なんだ」

 そう話す牧村先生の表情は、沈んでいた。
< 29 / 57 >

この作品をシェア

pagetop