【完結】橘さんは殺された。
⑥事件の見直し
「瀬野さん、当時あの店の近くにあった貴金属店には、防犯カメラが設置されていたそうなんですけど……」
七年前の事件当日、牧村先生達が見失ってしまったと思われる場所には、貴金属店があったそうだ。
しかし事件からニ年後、その店には金品強奪のために強盗が押し入り、一億円以上の貴金属が盗まれるという事件が発生していたようだった。
「あの事件の店、ここにあったのか……」
「はい。そのようです」
今そこの場所は空き家になっており、テナントを募集している状態であった。
強盗に入られた貴金属店は、その後すぐに経営が悪化して、閉店を余儀なくされたようであった。
「ここがまだ残っていればな……」
「……そう、ですね」
何か時間に繋がるような証拠が出ていたかもしれないと思うと、ものすごく悔しい。
今更どうこう言っても何も始まらないんだ。
「ここの不動産屋はまだあるか?」
と瀬野さんに聞かれたが「いえ、そう思って調べましたが、ここの不動産屋も一年前に倒産しています」と答えた。
「そうか……。倒産してたか」
「はい」
せめて不動産屋に話を聞けたらと思ったんだけどな……。非常に残念だ。
「俺もこの辺で少し聞き込みをしてみたが、この辺りに当時の事件のことを詳しく知る人はいなさそうだったな」
瀬野さんは自販機のそばにある喫煙所でタバコを加えながら、俺にそう言った。