【完結】橘さんは殺された。
「お前のその思い、お前のその気持ちは、俺が全部分かっている。 だから俺がいるんだろ?」
「……はい、瀬野さん」
瀬野さんに助けられた俺は、もう一度その思いを強く胸に抱きしめた。
「捜査の基本は足で稼ぐこと、なんて俺は古臭いことは言わねぇ。 でも捜査において一番大切なことは、憶測で動かないこと。そして基礎を見直すことだ」
「はい」
そうだ。憶測だけで動くことは意味のないことだと、瀬野さんは俺に教えてくれた。
そして立ち止まったら、もう一度基礎に戻ること。そう教えてくれた。
「藤嶺。何か他に見落としてることがないか、もう一度調べるぞ」
「はい!」
俺達はもう一度署に戻り、当時の捜査資料に再び目を通した。
「……ん?」
そしてある事実を見つけたのだった。
「あの、瀬野さん」
「どうした?」
「橘智夏の両親……離婚してたんですね。事件のあった半年後に」
俺は事件の後の橘さんの両親がどうしていたのかなんて全く分からなかったから、まさか離婚しているとは思っていなかった。
……でもその離婚した理由に、俺は正直引っかかった。
「みたいだな。まあ母親は、娘が殺されて精神的に参ってしまっていたようだしな……」
と話す瀬野さんは、缶コーヒーを飲みだす。
「いえ、俺が気になったのはそこじゃないんです」
「ん?……どういうことだ?」
瀬野さんは俺の方に視線を向ける。