【完結】橘さんは殺された。


 そして父親はそれを前から知っていた。 だから橘さんを女性として意識して、好意を抱いていた。
 そして父親の特権を使って、彼女に性的暴行を働いていたーーー。

「……許せない」

 彼女をあんな風に傷付けて、父親なのに……。家族だったのに……。
 愛情を持って育てていた娘を、傷付けるようなことをするなんて……。

「絶対に許せない……」

「……落ち着け、藤嶺。 でもこの父親、怪しいニオイがプンプンするな」

 腸が煮えくり返るような思いになった俺は、思わず拳をギュッと握りしめた。

「……もしあの日、父親が彼女を殺したとすれば、説明が付きますね」

 彼女は殺される前、性的暴行を受けていた。彼女が履いていた下着、そして彼女の身体からは、犯人のものと思われる体液が検出されていた。
 もしそれが本当に、父親のものだったとすれば……。

「確かにな。 もしそうなら……あの時、彼女が抵抗出来なかった理由も頷けるな」

「……そうですね」

 彼女は父親に支配されていた可能性がある。……だから抵抗したくても、出来なかった。
 しかもあんな林の中に連れて行かれたら、誰も助けなんて来ないのを父親は分かっていた。 
 だからわざわざ、あんな林の中を選んだ……。

「彼女が父親に抵抗が出来なかったとしたら、考えられる理由がある。……恐らく父親から、性的暴行を何度も受けていた」

「……それなら、あの日抵抗した形跡がなかったのも頷けますね」
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