【完結】橘さんは殺された。
俺が具合悪そうにしていると、橘さんは俺に心配そうに「藤嶺くん、大丈夫……?」と声をかけてくれたんだ。
そんな橘さんの笑顔を、わずか十七歳の命を弄んで奪った犯人を、俺は絶対に許さない。
「……藤嶺」
瀬野さんは俺の肩をそっと叩いた。
「お待たせしました。……どうぞ、お座りください」
しばらくして、橘さんの母親がお茶を持ってリビングにやってきた。
「ありがとうございます」
「では、失礼します」
俺と瀬野さんは、隣に並んで座った。
「お茶です。熱いうちにどうぞ」
「ありがとうございます。いただきます」
目の前に置かれたお茶に先に手を伸ばしたのは、瀬野さんだった。
「あの、所で……。娘の事件を調べ直してるっていうのは、どういうことなんでしょうか……?」
母親は俺達の前に腰掛け、そう問いかけてくる。
「実は橘さんの高校の同級生という方から、橘さんの事件についてもう一度調べ直してほしいという依頼がありまして……」
そう言ったのは俺じゃなく、瀬野さんだった。
「……そう、だったんですか。高校の同級生が……」
「はい。 娘さんの事件については、未解決事件として処理されていましたが……。今回の依頼を受けて、僕達警察で、再度捜査することになりました」
瀬野さんがそう言うと、母親は「そうですか……。再捜査を……」と下を向いた。