【完結】橘さんは殺された。
そして母親は、唇を噛み締めていた。
「橘さん。娘さんの父親は、娘さんに好意を抱いていたのではないですか?」
そして少しして瀬野さんは、母親にそう聞いた。
「ちょっと、瀬野さん……!」
それを聞くのは……俺だって……。
「……刑事さんの、言う通りです。 元夫は、娘に好意を抱いていたんです。 だから自分の娘じゃないと知って苛立って、私や娘に対して暴行を振るうようになったんです……」
性的暴行だけでなく、二人に暴力まで……。なんていう残酷な事実なんだ……。
「そして娘には、性的暴行まで……」
「娘さんの性的暴行のことは、いつからご存知だったんですか?」
こんな中でも、瀬野さんは冷静だった。顔色一つ変えないんだ。
「……お恥ずかしながら、娘から相談されて初めて知りました」
「それは……いつですか?」
イヤなことを思い出させてしまっていることは、分かっている。
でも事実を知るためには、どうしても必要なことなんだ……。
「……娘が高校に入ってニ、三ヶ月くらいした時です。娘が私に、お父さんからレイプされてるの……。助けてお母さん、と相談してきたんです」
「……そうですか」
やはり父親は、橘さんに対して性的暴行を働いていた。……本当の娘ではないと知ったことで、あんなことをした。