【完結】橘さんは殺された。
⑧真実の瞬間ⅰ
「藤嶺、これ頼む。スマホの通話記録だ」
「分かりました」
橘さんの事件の真相を追いかけながらも、事件が起きれば現場に行く俺達だった。
他の事件が解決するまで、橘さんの事件は捜査が出来ない。解決させてからまた、捜査を再開する。
一刻も早く父親の所へ行きたいのだが、今担当してる事件を解決させないと、先へは進めそうにない。
でもそういう時に限って、事件は難航する。
「ケータイ会社に問い合わせて、通話履歴調べます」
「任せた。 俺は鑑識に行ってこの繊維片を調べてもらってくる」
「お願いします」
俺は捜査の傍ら、橘さんの事件の捜査資料を何度も読み直した。
不可解な点がないか、見落している点がないか、何度も読み直した。
◇ ◇ ◇
「お疲れ、藤嶺」
「瀬野さん、お疲れ様です」
捜査の途中、休憩所でカップ麺を食べている俺の隣に、瀬野さんはドカッと座った。
「藤嶺、お前……明日橘智夏の父親の所へ行って来い」
そして一言俺に、そう言った。
「……え?」
「この事件は俺達だけで調べられる。 お前は早く、父親の所に行って話聞いてこい」
「え、でも……」
瀬野さんは俺にそう言って、コーヒーを飲みだした。
「ようやくここまで来たんだ。早く事件の真相、知りたいんだろ?……本当に父親が犯人なのか、突き止めてこい」
瀬野さんの言葉は、妙に熱かった。
「藤嶺、忘れたのか。明日は橘智夏の命日だ」