【完結】橘さんは殺された。
「……そうか」
明日は橘さんの命日だった。
「お前がここまで真相を掴んできたんだ。……お前の手で、終わらせてこい」
「……瀬野さん」
瀬野さんの言葉は力強くて、そして勇気にもなった。
「課長からの伝言だ。明日は有給消化だ、だってさ」
「……はい。ありがとうございます」
俺は橘さんのために、そして俺自身のために、明日父親の所へ向かうことにした。
「あ、どうでした?繊維片の鑑定」
「ああ、あの繊維片はストールだった」
そう話した瀬野さんは、出来たてのカツ丼に手を付け始める。
「ストール?もしかして、凶器ですか?」
「まだ分からない。……が、鑑識によると、その可能性は高いらしい」
瀬野さんはカツ丼を大きな口で頬張り始める。
「凶器は見つかってなかったんですよね?」
「ああ、持ちさられてたからな」
じゃあその持ちさられたストールが凶器で間違いないのか……。
「ストールは市販で売られてる物だった。どこにでも流通してるものだから、そこから辿るのは難しいだろうってさ」
「そうですか」
カップ麺を食べ終えてゴミ箱に捨てた俺は、自販機でお茶を買った。
「あ、瀬野さん。被害者のスマホの通話記録を調べましたよ」
「お、で? 何か分かったか?」
「被害者が最後に通話していた相手は、被害者の母親でした」
俺は通話記録をコピーした紙を瀬野さんに見せた。
「母親?」
「はい。母親に来週帰ると言っていたそうです」