【完結】橘さんは殺された。


「……良かったらお茶、どうぞ」

「ありがとうございます」

 お茶を淹れて持ってきてくれた父親は、俺の目の前にある椅子に腰掛けた。

「あの……智夏のことで聞きたいことって、何でしょうか」

 そして父親は、気まずそうに口を開く。

「実は橘智夏さんの事件について、進展がありまして」

「……進展?」

「はい。……実は橘智夏さんが亡くなる前、橘智夏さんがキャバクラで働いてことが分かったんです」

 でも俺がそう伝えても、父親はなぜか表情を変えなかった。

「浅羽さん、あなた知っていたんですよね? 娘さんがキャバクラで働いていたことを。あなたは事件の時もそれを知っていて、僕達に黙っていたんですね?」

 だけど父親は、その質問には答えようとはしなかった。

「浅羽さん、正直に答えてください。……あなたは知っていたんですよね?娘さんのアルバイトのこと」

「……はい。知っていました」

 そして父親は、観念したように答えた。

「浅羽さん。あなたどうしてそんな重要なことを、黙っていたんですか?」

 そう問いかけた俺に、父親はこう答えた。

「……黙っていたのは、娘のためです」

「娘さんのため?」

「……智夏がキャバクラで働いているなんて周りに知られたら、娘が可哀想だと思ったんです。あの子は本当にいい子だったんです。素直で、優しい子だったんです」

 そう話した父親に、俺は更に問い詰める質問をした。
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