【完結】橘さんは殺された。
⑨真実の瞬間ⅱ
コイツは、頭がおかしいのか?……言っていることがおかしすぎる。
「刑事さんも調べたんだから分かるでしょ?アイツは俺の娘なんかじゃない。 アイツの父親は、俺の友人だった男ですよ?俺はそんなヤツの子供を、ずっと育てさせられていたんですよ?」
「だからって、そんなのは父親のすることじゃないですよね? 智夏さんにとってあなたは、父親だったんですよ?」
俺がそう言い返すと、父親は再びこう口にした。
「父親でもなんでもないですよ、俺は。俺は赤の他人ですよ。……だから智夏に分からせてやったんですよ。赤の他人はこうなる運命だったって」
「……っ、浅羽さん、あなた……」
コイツはとんでもなく最低な男だ。……クズすぎる。
「あれはお互いに同意の上だったんですよ、刑事さん。俺は悪いことはしてません」
「……浅羽さん、あなた事件当日の夜、智夏さんと一緒にいたんじゃないんですか?」
「はい?」
「智夏さんが殺された時、智夏さんの身体には犯人のものと思われる体液が残っていたんです。 あれは浅羽さん、あなたのものですよね?あなたの体液を調べれば分かることですよ?」
俺がそう問いかけると、父親は「何を言ってるのか、分かりませんね」ととぼけだす。
「浅羽さん、とぼけないで正直に答えてください。 あなたは事件の夜、智夏さんをあの林の中に連れていき、智夏さんに暴行を働いた。……そして彼女を殺害した。そうですよね?」
「……はい?」