【完結】橘さんは殺された。


「あなたが、あの事件の犯人ですね?」

 俺がそう問い詰めると、父親は黙り込み、何も言わなくなった。

「浅羽さん、あなたは当時家族としてみなされ、当時あなたは被害者遺族だった。 だから指紋やDNAなどは採取されなかったんです。……だからあなたは、それを利用したんじゃないですか?」

「……なんで私が娘を殺すんです?」

「あなたは事件当時、娘さんに何か言われたんじゃないですか?……例えば、暴行のことを誰かに話す、とか」

 考えられる理由はいくつかある。だけど一番動機として考えられるのは、それしかない。

「……話すって、誰にです?」

「そうですね。例えば……智夏さんの゙本当の父親゙とか」

「ーーーっ!」

 俺がそう話した瞬間、父親の表情は一気に変わった。

「……やはりそうだったんですね、浅羽さん。あなたは娘に暴行していることを本当の父親であるあなたの友人に暴露する、と言われたんですね? だから智夏さんに暴行を加えて、そのまま殺害した」

「……智夏はいい子だった」

 そして父親は、観念したような表情を見せた。

「……え?」

「智夏は優しい子だった。いつもお父さんと呼んでくれた。俺にいつも笑顔を向けてくれて、本当に可愛い娘だった」

「……ならどうして、あんなことを?」

 そう問いかけると、父親は俯いてこう答えた。

「智夏が俺の本当の娘ではないと気付いたのは、智夏が中学三年の時です。……会話が聞こえてきたんですよ」
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