【完結】橘さんは殺された。


 血が繋がってなくても、家族になれていた。……ちゃんと家族として。
 少なくとも橘さんは、浅羽さんのことを父親として思っていたはずだ。
 
「……浅羽さん。あの日の夜、一体何があったんですか?」

 俺は黙り込む父親に、そう問いかける。

「浅羽さん!答えてください」

 少しだけ声を荒らげると、父親は再び語りだした。

「あの日の夜、私は接待があって取引先の方と食事をしていたんです。……その帰り道、智夏が近くを歩いていたんです。それで私は、あの子に声をかけました」

「……それで?」

「あの子がバイトをしていることは知っていました。智夏からは、家庭教師のバイトをしていると聞いていました。……でもまさかそのバイトが、キャバクラだったと知って心底驚きました」

 橘さんはキャバクラでのアルバイトを隠すため、家庭教師のバイトとウソを付いていたってことか……。
 キャバクラでバイトしていたと知って、俺も正直疑ったし、驚いた。

「だから智夏に聞いたんですよ、あの日の夜。キャバクラでは誰かに触られていたのか、って」

「………」

 何だ……この胸糞悪い感じは。 聞いてることがすごくおかしい……。

「智夏は私に正直に答えましたよ。……やっぱり所々、触られるってね」

 そう言った智夏の顔を、俺は多分一生忘れないだろう。
 コイツは狂気な人間だ。娘を弄び、違う感情を抱いていた。

「だから私は、あの子をあの林へ連れていき、お仕置きしたんです」
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